王貞治監督の勇退に思うこと。


校長室に入って気が付いていた人も多いかと思いますが、4月から7月くらいまで、私の机の上には王貞治監督から贈っていただいた大きな胡蝶蘭(こちょうらん)の花が咲いていました。

王監督とは、ドキュメンタリービデオを作る仕事で初めてお会いしてから、ちょうど10年のお付き合いになります。約2年間にわたり密着取材をさせていただき、何度か独占インタビューもさせていただきました。そして、ダイエーホークスが2連覇し、王監督と長嶋監督とが対戦したON日本シリーズが盛り上がったタイミングにビデオの発売時期が重なったこともあって、売れ行きは好調、また、視聴者からの評判も良く、監督にはとても喜んでいただきました。

ビデオの制作が終わり、その後、私が独立、起業し事務所を移転した際には、会社のオフィスに遊びに来てくれました。それでも、お付き合いとしては、1シーズンに1~2回、球場にご挨拶にお伺いする程度だったので、まさか、自分が和田中学校の校長になった時に、花を送ってきてくれるとは思いもしませんでした。

まちがいなく、王監督は、私の人生に大きな影響を与えてくれた方の一人です。王監督から教えていただいたことは一言では言い尽くせないのですが、そのうちのひとつは、『 “一流”の人とは、どういう人か』ということです。

“一流”の人とは、人よりお金多く持っていたり、テレビに出て有名だったり、特殊な能力や権力をもっていたり、そういう人のことを言うのではありません。「実るほど頭を垂れる稲穂かな」ということわざがありますが、”一流”の人とは、礼儀正しく振舞う、人の話を謙虚に聞く、社会のために貢献する、厳しい自己を確立する、目標に向かって努力するなど、誰もがあたりまえに「するべきこと」を、誰にもできないくらい「やり続けられる」人を、一流の人というのだと思います。監督の生きざまや、監督に関わる多くの人への取材、そして、野球人でもない私へ接し方を通して、そう確信しました。

王監督は、868号のホームランの世界記録を持ち『世界の王』呼ばれています。アメリカ大リーグでも絶大なリスペクトを得ています。それは、ただ並外れた世界記録が凄いのではなく、王監督の一流の人間性や品格から、日本にとどまらず世界中人々から尊敬され、『世界の王』と呼ばれているのです。

私は、君たちに「あいさつをしよう」と言いますが、実は王監督の影響です。監督は、球場にはいると、チームメイト、球場関係者、OB、新聞記者など、すべての人に左手を高くあげて大きな声をかけます。決して、偉そうに球場に入ってこないのです。(実は、偉そうに球場にはいってくる監督がほとんどです。)だれよりも明るくあいさつをしている監督の姿をみて、ぜひ、自分が王監督のようになりたいと思うし、みんなにもぜひそうなってほしい、と願っています。

今回、王監督の突然の勇退のニュースを聞いて、やはりショックでした。いつまでも、監督をやっていただけると勝手に思いこんでいましたので、もう監督のユニフォーム姿が見られないと思うと、いてもたってもいられなくなり、感謝の気持ちを伝えようと、27日土曜日には、千葉ロッテ・マリンスタジアムに行ってきました。

王監督

球場に着くと、王監督はお忙しいにも関わらず面会の時間をとっていただきました。
「公立の中学校だよね。保護者とか、大変なんじゃないの?」
「とても、大切な仕事だから、意志をもってがんばれよ。」
自分が激励をしに行ったつもりなのに、いつの間にか自分の方が励まされてしまいました。
試合後に移動バスに乗り込む際に、監督からかけていただいたのは、
「これからの子供たちを、ぜひ、びしびしと厳しく指導しください」。
という言葉でした。

王監督にお会いすると、いつも監督の大きさに圧倒されて、私は何もすることができません。それでも、私が王監督から教えていただいたことを、精一杯君たち和田中生に伝えることが、監督への恩返しになる、そう思っています。


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