【夏休みのコラム⑦】これからの公教育に求められること。


夏休みがいよいよ終わろうとしています。

和田中ではこの夏休みの期間も
月、水、金、土の週4日、
夜の7時になると進学塾の講師による有料授業
「夜スペシャル(夜スペ)」が始まります。
今日も『みんな真面目にやっているかな』と思い
夜スペの授業をのぞいてみると
受講生である3年生約70名(3年生は全体で160名)は
真剣に授業に取り組んでいました。
 
 
夜スペを本格的にスタートさせた昨年の5月には
『学校教育を変える”特効薬”になるか”劇薬”か』
という話題で大騒ぎになりました。
マスコミからの取材依頼が絶えないので記者会見を開くと、
テレビ局8社を含むマスコミ報道機関60社ほどが学校に押し寄せました。
今年は2年目を迎え昨年の大騒ぎがうそだったかように落ちついています。
 
 
そもそも、藤原前校長の在任中の平成20年1月に始まった夜スペは
3か月の試行期間を経て、私が校長に就任した翌月の平成20年5月から
本格的に開始することになりました。
その際、受講対象者を
3年生の一部成績上位者から3年生の全員に変更したことで
「その場しのぎの、信念のない教育施策だ」
などと多くの教育評論家から厳しい指摘を受けました。
また
「学校の教師は何をしているのだ」
「公教育の崩壊を認める愚策だ」
と、校長あてに非難の電話が随分とかかってきました。

もちろん批判の声には耳を傾けます。
そして問題があれば改善をしていきたいと思います。

ただ、和田中の学びの保守本流である
教師の授業を中心とした学校全体での取り組みや、
今の公立中学校の置かれている現状を無視して
夜スぺを捉えても意味がありません。

たとえば
東京都の場合、約7割の中学生が私塾に通っていて、
1年間に平均約60万の受講費用がかかっています。
当然、塾に通いたくても通えない生徒もいる状況下で
週4日各回3時間(3コマ)の授業を月間2万4,000円で提供することは
十分に建設的な教育施策だと思っています。

また、公立中学校の現実的な課題として
きめ細やかな指導ができるまでの十分な教員数が配置されていません。
私塾と連携することはその解決方法の一つであり、
習熟度別の少人数クラスの補習も可能になります。

さらに、3年生になると塾に通うために
やむを得ず部活動を早退する生徒も多くなります。
そこで学校の中に学びの場をつくることで
部活動の日々の練習を最後まで打ち込むことができる
生徒にとっての新しい環境を提供することができます。

あくまでも、夜スペは学校の学びを補完するものであり
地域の住民の方々で組織された地域本部や
保護者の方々の力を借りて実現できる学びの場なのです。
 
 
地域本部の活動においても、夜スぺばかりが注目されがちですが、
大学生のボランティアが中心となって行う土曜日の寺子屋(通称ドテラ)や
英検合格を目標にした英語の特別コース授業、
英検、漢検、模試などの各種学力試験の実施、
ボランティア司書を中心とした図書館の居場所づくりなど
その活動は多岐に及びます。
特に「ドテラ」には教員志望の大学生や大学院生が数多く参加し
和田中生のためには何が必要かを自らが考え実行しています。
今年の夏休みに”ドテラ・サマースペシャル~惑星を旅する一週間~”
と題して行った、皆既日食を体験する5日間のカリキュラム内容は
本当に質の高いもので、参加した生徒も大喜びでした。
 
 
こうした和田中の様々な取り組みの根底に流れているのは
「前例に縛られない」という意識と
「自前だけでやらない」という発想です。

国からの教育予算が大幅に増え、
教員も増員されるという見込みがない現状では、
これからの公教育は、
外部の様々な資源、すなわち、ヒト、モノ、カネ、ジョウホウ
を積極的に内部に取り込みネットワーク化することが不可欠です。
夜スぺに関して言えば、
ともすれば敵対関係にあった公教育と私塾が
反目することなくお互いがコミュニケーションを取り、
地域住民や保護者と協力しあいながら
「21世紀の未来の日本を担う子どもたちのために」
というみんなの共通の願いを結集して
初めてできる事業なのです。

そして、これからの学校長の役割のひとつは、
「前例に縛られない」し「自前だけでやらない」。
公教育を取り巻く様々な課題に対して
学校の努力を前提にしつつも、
保護者、地域住民、外部の企業などと力を合わせ
課題解決の方向を見出していくことだと思います。
 
 
さて、今日の夜スぺの休み時間に、生徒の一人が声をかけてくれました。
「校長先生、『夏休みのコラム』読んでいますよ。ちょっと難しいけれど面白いです。

『読んでくれて、どうもありがとう。』

また、食事のお手伝いをしていた保護者の一人からも
「夏休みのコラム、いつも楽しみにしています。あと何回あるのですか?」
と聞かれました。

『ありがとうございます。残りあと2回です。』と答えました。
 
 
というわけで、いよいよ次回『夏休みコラム』の最終回です。


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