朝日新聞 5月23日 朝刊 『学ぶ』
東京都杉並区立和田中学校の藤原和博・前校長は、地域
住民でつくる「地域本部」、私塾と提携した「夜スペ」、
講師を招く「よのなか科」など次々に新事業を立ち上げ教
育改革を進めてきました。学校外部の資源を活用する「黒
船戦略」であり、その結果、学校選択制をとっている杉並
区の中で、和田中の生徒数は5年で約2倍に増えました。
先生たちからも「自分の授業に専念できるようになっ
た」という声をよく聞きました。ただ、「学校全体をどう
よくするか」にはあまり関心がないようにも感じました。
「朝の時間を学力向上のために有効活用できませんか」
と職員会議で聞いたところ「それを考えるのが校長では
ありませんか」と反論されました。そこで、具体的な内容
を考えるのは先生たちの役目で、委員会でしっかりと検討
するよう伝えました。
今、和田中では朝の20分間に記憶力と集中力を高める
「脳トレ」を行っています。「科学的根拠に基づいた学習
をしたほうがいいのでは」という先生の一言がきっかけに
なり、脳科学研究の第一人者である川島隆太教授への協力
依頼から授業の内容と運用まで、そのほとんどを先生たち
が決定し実践しています。
学校外部の力を利用した改革だけでは限界があります。
学校づくりの中心は、あくまでも先生たち。私の役目はビ
ジョンを明示し、先生たちの力を引き出しつなげていくこ
と。改革を継続したいと考えています。
(東京都杉並区立和田中学校長)