朝日新聞 日曜版 『学び』あめはれくもり
「”スイッチ”を入れる」出会い
「あの子は、今日〝スイッチ〟が入りましたよ。ぜひ見
守って下さいね」。授業を終えた書道家、武田双雲先生が
私にそう言いました。その言葉どおり、その子はやめてい
たという書道塾に再び通い始め、学校の授業にもより積極
的に取り組むようになりました。
東京都杉並区立和田中学校 では、ゲスト講師を招く「よ
のなか科」の授業を行っています。ゲスト講師は著名な芸
術家やスポーツマン、医師、会社社長から区役所の方まで
多種多様です。ただ、私がこだわっているのは、中学生が
直感で「こういう人になってみたい」と思えるような大
人。
中学生は将来に不安を持ちながらも、何かワクワクする
ような出会いを探しています。生き生きと働く大人と出
会い、キラキラとした言葉を投げかけてもらうと、生徒は
〝やる気のスイッチ〟を入れ、自ら変わるキッカケをつ
かんでいきます。私たちの役割は、将来の選択肢を生徒に
いっぱい提示してあげること。
4月には、バンクーバー・パラリンピックのアイススレ
ッジホッケーで銀メダリストに輝いた上原大祐選手に、競
技の傍ら障害者スポーツのために活動をしている話をして
いただきました。授業後「ぜひ上原さんの力になりたい」
と校長室に来た生徒は、今、障害者スポーツ団体でボラン
ティア活動を始めました。
(東京都杉並区立和田中学校長)