【朝礼にて】オバマ大統領の演説を聞いて考えたこと。


今から2週間前の1月20日、アメリカ合衆国44代大統領にバラク・オバマ氏が就任しました。オバマ大統領の演説を聴くために、首都ワシントンには200万人もの民衆が集まったそうです。オバマ大統領が「黒人初の大統領」としてなぜこれほど大きな注目を集めているのか、今日は考えてみたいと思います。
 
 
 
まず、オバマ大統領の母親は白人、父親は黒人。つまり、オバマ大統領は白人と黒人の両方の血を引いていますが、オバマ氏自身は、あえて「私は黒人」だと言っています。それは、アメリカの黒人の悲しい歴史に関係しているのです。

今から約500年前、1492年にヨーロッパの冒険家、コロンブスがアメリカ大陸にたどり着きました。それから、アメリカにはヨーロッパのいろいろな国の人が移り住みましたが、その人たちの中にはアフリカにいた黒人を『奴隷』として買い、連れてくることにしました。黒人は、長い間、人間としては認められず「もの」として扱われていたのです。奴隷から解放されて自由になった後も、学校や食堂などの施設では、白人と黒人が分けられるなどの差別が行われていました。

今から50年ほど前、アメリカでこんなことが起こりました。当時、黒人は駅の待合室やバスに乗っても、席に座ることができず厳しい差別を受けていました。ある日、黒人の女性が、バスに乗りました。その女性は、ひどく疲れていて、
「空いている座席に座ってもいいですか?」と運転手に聞きました。
しかし、運転手は、「黒人は、座席には座ってはいけない。立ちなさい。」
それでも、疲れていた黒人の女性は座席に座ったために、警察が来て逮捕されてしまいました。
その話を聞いて、一人の黒人男性が立ち上がり、運動をおこしました。
「それならば、バスに乗らないで、みんな、仕事場まで歩こう」
その黒人は、その運動を起こしたことで逮捕されますが、それでも黒人たちは運動をやめず、一年後には、法律が変わり、バスには、白人も黒人もどの席にも自由に座れるようになりました。この運動を起こした黒人こそが、マーティン・ルーサー・キング牧師です。

そして、今から45年前、キング牧師は、1963年にこんな演説をしました。
『I have a dream.・・・・私には、夢があります。いつか、幼い4人の子供たちが、肌の色によって評価されるのではなく、人の品格によって評価される国に住めることになるであろう。』
キング牧師は、数年後暗殺されてしまいます。しかし、キング牧師の「夢」は、多くの黒人、多くのアメリカ人の心の中に生き続けてきたのです。

1月20日に大統領に就任した、オバマ氏はまさに、その夢「人間が肌の色で差別されることなく、人間の品格で評価がされる国になる夢」を体現したのです。キング牧師の夢をかなえたオバマ大統領の演説に、アメリカに留まらず、全世界が聞きいったのです。オバマ大統領は、20日の演説で、たくさんの、そして、いろんな民族が集まるアメリカだからこそ、みんなが仲良く暮らせる、差別のない社会を作りたいと言っています。

和田中学校の学校目標である「自立、貢献」するめに、「We have some dreams 夢に向かって」という言葉があります。これは、キング牧師の、I have a dream言葉に思いを寄せています。夢というのは、自分一人でかなえるものではなく、みんなで、そして時代を超えて叶える夢もあるのです。そして、和田中でも、いじめや差別のない、人格が尊重される学校でありたい、と思っています。

最後に。
マーティン・ルーサー・キング牧師の誕生日は、今、アメリカ合衆国の祝日になっています。その祝日を迎えるたびに、アメリカ国民はキング牧師の勇気と黒人の悲しい歴史を忘れないようにしているのです。

以上です。


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