夜スぺ21に参加する72名の生徒・保護者のみなさんへ


昨年より始まった特別補習事業「夜スぺシャル(以下夜スぺ)」の第2期が今日からはじまります。昨年41名だった夜スぺも、今年度は、72名となりました。この1年間、実施してきた経過を振りかえり、検証と総括をふまえながら、私の考えと、参加する生徒、保護者みなさんへお願いを含め、お伝えさせていただきます。
 
 
 
◆はじめに◆ ~夜スぺ1年間の経過~

まず、「夜スぺ」を実施した1年間を振り返ってお話をいたします。
平成20年の1月下旬より前校長藤原和博校長のもと、地域本部が主催し、私塾と連携した特別補習事業「夜スぺ」がスタートしました。これまでも、和田中学校では、地域本部が主催する事業として土曜日寺子屋(ドテラ)や英語アドベンチャーコースなどの学力の底支えと向上のための取り組みを積極的に行ってきました。しかし、学校の授業が、学力中位層レベルを中心として進めざるを得ない現状を踏まえ、比較的学力の高い層の力を伸ばすための新たな学習機会を提供するため、私塾との連携による「夜スぺ」を実施することになりました。授業時間は1日2時間45分、月水金土の4日間、国数英の3教科、月24,000円の料金、申請があれば減額措置ができるという内容で募集をしました。その結果、19名の生徒が受講を希望し、1月下旬より試行実施いたしました。

そして、4月より私が校長に就任し、夜スぺの試行実施期2カ月間の検証をするために、4月上旬に参加者17組の生徒とその保護者と個別に面談を行いました。また、参加をしていない保護者5名への面談も実施しました。その結果、受講している生徒の満足度は非常に高く、生徒が学校の授業をおろそかにしているという事実もなく、また、部活後すぐに夕食をとり勉強が始められるのは生活習慣の点でもとてもいい、という意見が多くありました。参加している生徒としていない生徒の間でいじめや差別が起こっている実態はありませんでした。ただ、現在の成績は上位層ではないものの、夜スぺに参加を希望する生徒が他にも少なからずいることもわかりました。

以上の検証結果を踏まえ、地域本部との検討、調整を図りながら、5月以降の本格実施に向けて、受講科目、および実施曜日、料金は試行期間と同じとしましたが、受講できる生徒に関しては、「もっと学びたいと願う」生徒であれば、成績に関わらずだれでも参加できる形態に変更しました。つまり、夜スぺの目的を「もっと学びたいと願う生徒の学力(論理的思考や応用力)をさらに伸ばす」こととし、その機会は、現在の成績に関わらず受講できるようにしました。そして、5月中旬に改めて募集をし、24名が新たに参加をし、受講生は合計41名となり、習熟度別に3クラスに分け授業を進めてきました。

5月下旬の本格実施以降、中学校と地域、そして私塾とが力をあわせたこの新しい取り組が、生徒たちにどのような効果を生みだすのか、一人でも多くの生徒の学習の意欲が向上し、勉強する習慣が身について欲しいという思いで実施してきました。この間、地域本部と保護者とが協力して新しい運営組織を立ち上げ、動き出しました。また、「夜スペ」を実施する中で生じた、様々な運用上の課題については、教育委員会からのご助言もいただきながら、適切に対応してまいりました。そして、先月2月27日をもって無事に一年間の夜スぺを終了し、受講生の高校受験を終えることができて、うれしく思っています。

◆20年度夜スぺの検証と総括◆

ここで1年間を振り返ってみて、受講生および保護者のアンケート調査の結果をご報告します。夜スぺは、受講者が志望校に合格することも目標の一つではありますが、それ以上に、受講生の「学習習慣がつく」、「学習の意欲が向上する」ことが最も重要であると考えています。その点において、「学習習慣がついた」生徒が、アンケート調査に回答した生徒の割合で91%。また、「学習の意欲が向上した」生徒は、アンケート調査に回答した生徒の割合で94%。その他、「部活動との両立ができた」生徒は、アンケート調査に回答した生徒の割合で65%。また、「受講して満足であったか」との質問に関しては、84%の生徒が満足した、と回答しています。

こうした、受講生徒・保護者からの高い評価から、夜スぺの「もっと学びたいと願う生徒の学力(論理的思考や応用力)をさらに伸ばす」という目的は、十分に達成できたものと考えています。(以下資料1)

(資料1)本格実施期の検証結果

(1)参加「生徒」アンケート調査
<実 施 日> 12月
<回答生徒数> 35人(38人中) 
<アンケート結果>

○「学習習慣」身についたか。(回答生徒のうちの割合)
■大変身についた 10人(29%)  ■身についた 22人(62%) ■ほとんど身につかない1人(3%) ■身につかない 1人(3%) ■回答なし 1人(3%)

円グラフ「学習習慣身についたか」

○「学習意欲」が向上したか。(回答生徒のうちの割合)
■大変向上 16人(46%) ■向上 17人(48%) ■やや下がった 1人(3%) ■下がった 1人(3%)

円グラフ「学習意欲が向上したか」

○学校の勉強と両立できたか。(回答生徒のうちの割合)
■完全に両立 6人(17%) ■両立 20人(57%) ■やや不両立 7人(20%)■まったく不両立 1人(3%) ■回答なし 1人(3%)

円グラフ「学校の勉強と両立できたか」

○部活との両立はできたか。(回答生徒のうちの割合)
■完全に両立 12人(35%) ■両立 11人(31%) ■やや不両立 7人(20%)■まったく不両立 0人(0%) ■回答なし 5人(14%)

円グラフ「部活との両立はできたか」

「生徒」満足度調査
<調査日> 1月21日
<回答数> 35人(38人中) 
(内訳) Xクラス:8人 Yクラス:13人 Zクラス:16人
<調査結果> 4段階評価 3.47

「保護者」満足度調査
<調査日> 1月21日
<回答数> 21人(38人中)
(内訳) Xクラス:1人 Yクラス:8人 Zクラス:12人
<調査結果> 4段階評価 3.65

なお課題として、夜スぺの規則が学校の規則と同じであるにも関わらず、受講生の中には、服装や持ち物などの点で、規則が守られず、生活面での乱れが一部生徒に見られました。また、進学相談を学校とどう情報交換していくかなどの課題も残りました。これらに関しては、今年度改善してきたいと思っています。

◆第2期「夜スぺ」の目的について◆

さて、中学校の大きな役割は、学校の教育活動を充実させ、すべての生徒の学力を向上させることであり、そのための努力は教職員全員が全力で行っていかなくてはならないと考えています。ただ、これからの学校運営を考えていく上では、自前主義にこだわるのではなく、地域や保護者、企業などの外部の資源と連携・協力していく発想と行動は、これからの時代に必要不可欠です。したがって、第2期の夜スぺは、第1期の検証を踏まえながら、学校の教育活動と今まで以上に相乗効果が発揮できるように、私塾とより連携を図りながら実施していきます。つまり、第2期の夜スぺの目的は、「学校の教育活動とより相乗効果を生み出し、もっと学びたいと願う生徒の学力(論理的思考や応用力)をさらに伸ばす」ことをねらいとした補習事業とします。

◆2年生の現状分析と課題の抽出◆

第2期受講対象となる2年生の学力の状況についてお話しいたします。杉並区の学力調査などでは、和田中の2年生の国語、数学、英語の学力は上昇している傾向があります。ただ、数学、英語については、生徒間の学力に「ばらつき」、つまり成績上位層と中下位層の人との間に大きな「開き」があるのが現実です。その「ばらつき」を表す指標である「標準偏差」を見ると、国語は、16.7と比較的小さいのですが、英語は、23.1、数学は21.1、と大きくなっています。国語×数学、国語×英語、数学×英語をかけあわせたばらつきは、図(資料2)でみると鮮明です。

(資料2)

1)国語数学のばらつき
グラフ「国語数学のばらつき」

2)国語英語のばらつき
グラフ「国語英語のばらつき」

3)数学英語のばらつき
グラフ「数学英語のばらつき」

実は、この数学と英語の学力の「ばらつき」は、杉並区の調査などで2年から、3年生へ進級するとより大きくなる傾向があることが確かめられています。今後は、顕著に認められる「ばらつき」を拡大させずに、平均値に収斂させるのではなく、成績上位層も下位層もそれぞれが学力を向上させ、全体の平均値を大きく向上させていくことが今後の課題であると考えています。

◆第2期の「夜スぺ」について◆

今年度の「夜スぺ」は、平成21年度に実施するので「夜スぺ21」の名称で実施します。
「夜スぺ21」では、これまでの国語、数学、英語の3教科を改め、数学、英語の2教科を集中的、徹底的に実施していくこととします。2年生の数学、英語の学力レベルのばらつきは顕著であり、学校として優先順位を上げて取り組みたい課題であるからです。月金は数学、水土は英語とし1日150分、週4日間行います。それぞれの授業は、15~25名前後の少人数、習熟度別クラスで行います。料金は昨年と同額の月24,000円です。また、申請があれば減額措置を行います。

なお、国語を除いた理由についてですが、和田中の国語の授業は、現在、学習指導要領で定められた時間数の1.5倍以上の時間を確保し実践しています。また、朝読書を年間通じて行っているほか、漢字と作文の時間や意見文を連続して書かせるなど、国語力の向上に力を入れて取り組んでいます。来年度以降も、この授業体制を維持し内容をさらに充実させていく予定です。

以上、「夜スぺ21」は、第1期の検証総括を踏まえ、学校の授業とのより相乗効果を発揮できるように実施内容を工夫しました。また、夏季休業(夏休み)、冬季休業(冬休み)の長期休みでの集中講座を実施する予定です。その中では、教科として国語の実施も検討しています。

◆最後に◆
夜スぺ21に参加する生徒・保護者のみなさんへお願いがあります。
夜スぺ21の英語、数学のカリキュラム内容について、今までの検証結果を踏まえ、地域本部および私塾と打ち合わせを続けてきました。そこで、第2期のカリキュラム内容は、学校の授業で「覚えた」知識を、夜スぺの授業でしっかりと「できる」まで定着させ、さらに応用問題にも挑戦していきます。「わかった」だけでなく「できる」ようにすることが目的で、今まで以上に論理的に思考したり、応用力をつけたりすることに重点を置きます。したがって、学校の授業よりどんどんと先に進むことはありません。学校での授業でわかろうとせず、学校の授業がおろそかになってしまっては、学習効果がでない仕組みであり、一番大切にして欲しいのは学校での授業であることを忘れないでください。

また、夜スぺを受講し、就寝時間が遅くなり、生活習慣が乱れて、学校の授業がしっかりとできなければ何にもなりません。何度も繰り返しになりますが、「早寝、早起き。朝ごはん」の基本的生活習慣を徹底したうえで学校の授業に臨み、そのうえで、夜スぺに取り組んでください。

最後になりましたが、みなさん、受講したからには高い目標を設定してください。そして、「夢に向かって最善を尽くす」と和田中の学校目標にあるように、今回受講した72名全員が、それぞれの目標にむかって最善を尽くしてください。仲良しクラブであってはなりません。お互いに妥協をせず、切磋琢磨する集団であって下さい。そして、1年後は、自分で設定した目標を達成し、満足して終えることができるように努力を続けていって欲しいと思います。


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