3年生のみなさん、卒業おめでとう。
今日をもって君たちは和田中学校を卒業し、
それぞれの道を歩み始めます。
これから広がる君たちの未来とその可能性に、
心からエールを送りたいと思います。
さて、作家村上龍氏が描いた
「希望の国のエクソダス」という小説があります。
その小説の中で主人公である中学生は
「この国には何でもある、ただ『希望』だけがない。」
と言います。
確かに現在の混沌とした経済や政治情勢の中で、
多くの若者にとっては希望が見出しにくい、
そんな時代なのかもしれません。
しかし、私はこの和田中学校
そして、君たち3年生には
確かな希望があったと思います。
つい先日の出来事です。
君たちの中に、高校受験がうまくいかず
苦しんでいる友だちがいました。
私もその友だちが合格できるように
面接の練習を繰り返しました。
そのとき、
「校長先生、不合格が続いているのは辛いけれど、
今になって、ようやく先生方のおっしゃっていることが
わかってきたような気がするんだ。
今まで、これほどまで友だちに励まされたことは
なかったような気がするんだ。」と、
その友だちはつぶやきました。
その友だちは、最後まであきらめずに挑戦を続け、
第一志望ではなかったけれど、
自分の希望する高校に進学をすることができました。
また、君たちの中には、
不運にも事故にあい、大きな障害を負い
深い、深い、悲しみを背負った友だちがいました。
君たちは希望を捨てず、その友だちのために、
声をかけ、時には歌をうたい、メッセージを送り続けました。
やがて、その友だちは少しずつ回復をし、
今度は、君たちにメッセージを送ってくれました。
“みんながんばれ、おれもがんばる”
その短いメッセージは、私たちに
生きる意味や、生きる希望を与えてくれました。
その友達も4月からは、
自分の希望する高校に進学をすることができました。
希望は「まれな、のぞみ」と書きます。
希望は、もしかしたら
挫折や絶望の中で、軌道修正をしながら
見えてくるものかもしれません。
これから君たちの歩む社会は、
確かに希望が見出しにくいかもしれない。
でも、そんな社会だからこそ、
頭の固くなった大人では見つけられない
新しい可能性をみつけ、
希望をもつことはできるはずです。
そして、希望は、
人から人へと伝わっていくものかもしれません。
その友達の希望は、まわりの多くの人に感染し
勇気を与え続けました。
繰り返し言いますが、
君たちが歩んでいく道は決して真っ直ぐで平坦なものでない。
人生が自分の思いどおりにならないことも、
だんだんとわかってくる。
今抱いている夢は、もしかしたら叶わないかもしれない。
これから先、希望を見失いそうになったときは、
希望を持っている友達に会いに行くがいい。
その友達から、希望を分けてもらおう。
計画通りの人生を歩むことが不可能だとしても、
夢や希望をもった仲間と一緒に、
幸せな人生を歩むことは可能なのだから。
君たちには、確かな希望があったということ、
そして、希望に満ちた和田中の友だちがいたことを
忘れないで欲しい。
私には夢があります。
今から10年後、
君たちが社会の輝かしい担い手となったころ
君たちとふたたびどこかで巡り合い
いっしょに仕事をする、という夢です。
その夢にむかって
私も「自立・貢献」し、
最善を尽くしていくつもりです。
最後になりましたが、保護者のみなさん、
本日は、お子様のご卒業おめでとうございます。
いたらないところも多々あったかとは存じますが、
本日まで本校の教育活動に
ご理解とご協力をいただきましたことを
本校教職員を代表してお礼申し上げます。
三年間、ありがとうございました。
また、御来賓のみなさま、地域のみなさま、
本日はご多忙のところ
本校卒業式にご臨席賜りお礼申し上げます。
和田中学校は161名の卒業生を送り出しますが、
その志を受け継ぐ、在校生そして新入学生も続きます。
引き続きご支援ご協力のほどよろしくお願いいたします。
3年生の諸君、いよいよお別れです。
和田中で過ごした誇りを胸に、
思いっきり羽ばたいていってください。
これからが、君たちの本領を発揮する
和田中生としての「はじまり」です。
君たちのような、明るくて純粋でエネルギーがあり、
そして、希望に満ちあふれた、最高の若者と
この和田中の校舎で、ともに学び、
同じ時間を共有できたことを、
本当にうれしく思っています。
卒業、おめでとう。
そして、ありがとう。
平成22年3月20日 杉並区立和田中学校
校長代田昭久