【朝日新聞コラム③】生徒を引き出す田舎の力


朝日新聞 日曜版『学び』で掲載されたいるコラムを
ご紹介いたします。

東京都杉並区立和田中学校の修学旅行では、4~5人ず
つ分かれて農家に宿泊する農業体験を実施しています。今
年も5月日から2泊3日で、3年生103人が長野県
白馬村にお世話になりました。
 30年前までは都心にもあったという田んぼも、今ではほ
とんど見ることができません。多くの生徒が田植えをす
るのは初めてで、はだしになって味わう泥の感触に、最初
は悲鳴にも近い声をあげますが、コツを覚えると、熱中し
て苗を植えていきます=写真。

田植え

 採れたての野菜の味や自分
で打ったそばの味に感動し、地元の農家の方々とふれあっ
て、生徒の表情はとてもイキイキとしてきます。そして、
宿泊先の農家の方々を「お母さん、お父さん」と自然に呼
ぶようになります。
 出発前には「農作業なんかやりたくない」と文句を言っ
ていた女子生徒が、3日目の最終日は「帰りたくないよ」
と「お母さん」に抱きついて大粒の涙を流していました。
 「〝しいたけ〟が出されとき、絶対無理って思ったけ
ど、おいしいよ、と言われたので必死の笑顔でのみ込み
ました」「畑でとれたネギのみそ汁を食べて、ぼくにはお母
さんがいないので、これがおふくろの味なんだなぁと思い
ました」。体験後の感想文を読んで、田舎の農家には、都
会の教室にはない、生徒を優しく包み込む不思議な力があ
ると感じています。
(東京都杉並区立和田中学校長)


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