【卒業式にて】3年生のみなさん,卒業おめでとう


3年生のみなさん、卒業おめでとう。

君たちとの別れが近づいてきた昨年の10月から
君たち自身が選んだ『座右の銘』、
つまり、君たちの一番好きな言葉を
私は、一枚一枚色紙にしたため、渡してきました。
その中で一番多かったのは、この言葉でした。

「おもしろきこともなき世をおもしろく」

これは、明治維新の立役者、高杉晋作の言葉です。
君たちの中に、この言葉を選び、今の時代と幕末とを重ね合わせ、
大きな「志」を持っている人が何人もいて
私は、嬉しく、また頼もしく思いました。

3月のよのなか科、最後の授業では、
君たちは、こんな感想文を発表してくれました。

「ひとりよがりの一方通行の思考では、限界が来る。
様々な方向からの思考のなかで人間は進化するのだと感じた」

「いままで、非現実的だった社会の様々な問題を、
自分に関わる現実的な問題として捉えられるようになった」

「社会に貢献し、自分が成長してこそ、人は幸せ。
よのなか科とは人がいかに幸せに生きるかを考える授業だと思う」

およそ、中学生とは思えない社会性をともなった、沢山の感想文を読んで
『あぁ、これで君たちは、和田中を卒業できるなぁ』そう、思いました。

しかし、思い返せば、3年前。
君たちが入学したころの印象は、今とは違うものでした。
確かに明るくて元気はいいけれど、
どこかけじめがつけられない、少しひ弱な感じもしました。

しかし、その印象も次第に変わっていきました。

2年生の時の、冬のスキー教室。
激しい吹雪のために、リフトさえも止まってしまいました。
そんな中で、君たちはスキー板を担ぎ、
全員で、勢いよく、山の斜面を登りはじめました。
その時のほとばしるエネルギーに、
『こいつら、たくましくなってきたなぁ』そう、思いました。

最上級生となった部活動では、
君たちの「最後まで諦めない姿」に感動しました。
9回裏、2アウト、2ストライク。
ギリギリまで追い詰められても、仲間を信じ、プレーを続けました。
相手に、マッチポイントを、何度も何度も握られても
そのたびに跳ね返し、決してギブアップをしませんでした。
残り時間1分を切って、点差がついていても
涙をためながら、必死でゴールに向かいました。

君たちの、最後まで諦めない、ベスト尽く姿は、
今でもしっかりと、私の目に焼き付いています。

そして、最後の学芸発表会。
君たちは、最上級生として「かっこよさ」とは何かを教えてくれました。
下級生との合同練習では、
みんなで力を合わせることの大切さ、
一生懸命取り組むことの素晴らしさを、伝えてくれました。
震災への想いを紡いだ、オリジナル合唱曲「いま」。
その心のこもった歌声に、思わず涙があふれてきました。
杉並公会堂に響き渡った歌声は、
これから、何年先も語り継がれるだろう、
伝説の合唱だったと思います。

君たちにとって、この3年間は、
つらいことも、悲しいことも、たくさんあったと思います。
でも、よき友達、よき先生、よきお父さんお母さんに囲まれ
さらには、学校に訪れる地域や会社の”先生”との出会いを通じ、
君たちは、大きく成長しました。

中井学年は、
いつも笑顔の絶えない、気持ちの優しい、団結力のある
本当に素晴らしい、
最高の学年だったと思います。

さて、
昨年の3月11日、日本は未曾有の災害に遭遇しました。
多くの人たちの命がけの活動により、
日本は瀬戸際からは脱することができました。
しかしながら、一年が経過した今、
復興は思うように進んでいません。

今の日本には、何かが足りないのです。
それは、いったい、何なのでしょうか?

私はこう思います。
被災地の人たちの悲しみや痛みを、他人ごととして考えず、
「より良い社会とはどうあるべきか」を考え、行動していく力が
今の日本には、まだまだ、足りないと。

「おもしろきこともなき世をおもしろく」

この言葉を残した高杉晋作の師匠は吉田松陰でした。
その吉田松陰が開いた学校、松下村塾では、
先生と生徒が、身分や階級の差もなく、
「より良い社会とはどうあるべきか」を、
互いに議論し、学びあったそうです。
その結果、高杉晋作、久坂玄瑞、
後の内閣総理大臣となる、伊藤博文、山縣有朋など
わずか1年、わずか50名ほどの生徒の中から
新しい国造りを牽引する人材が、次々と輩出したのでした。

私は、君たちと、
平成の「松下村塾」のつもりで
学びあってきました。

この和田中学校の学び舎を卒業しても、
自分に対して、厳しく、たくましい自己を確立する。
相手に対しては、優しさや、いたわりの気持ちをもって接する。
そして、自分の目の前の損得に捉われることなく、
大きな夢や志をもって、この世の中をおもしろくする。

君たちには、そんな人間に成長していって欲しいと思います。
いや、君たちなら、必ずそうなれると信じています。

結びとなりますが、保護者のみなさん、
本日は、お子様のご卒業おめでとうございます。
至らないところも多々あったかとは存じますが、
皆様の本当に温かい支えがあり、
今日のこの日を迎えることができました。
教職員を代表してお礼申し上げます。
本当にありがとうございました。

また、御来賓のみなさま、地域のみなさま、
本日はご多忙のところ
本校卒業式にご臨席賜り、ありがとうございます。
今日、和田中学校は144名の卒業生を送り出すことができますが、
こらからも、キラ星のような下級生が続きます。
引き続き、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。

さぁ、卒業生のみなさん、いよいよお別れです。

自立、貢献
夢に向かって最善を尽くし、
社会に貢献できる自立した人間であれ。

この和田中魂を胸に、
君たちひとり一人が選んだ、
それぞれの道を
正々堂々、歩んでいって下さい。

いつまでも、いつまでも、
君たちのことを応援しています。

卒業、おめでとう。

そして、3年間、ありがとう。

平成24年3月17日 
杉並区立和田中学校 校長代田昭久


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