【保護者の会と地域本部のみなさまへ】2つの組織の連携について


 今年度より「和田中PTA」を改組して「保護者の会」とし、「地域本部」と連携を図ってきました。ちょうど1年が経過しましたので、現在の私の考えと今後の方向性についてお伝えさせていただきます。
 
 
 平成20年3月下旬に「『和田中PTA』がPTA協議会を”脱退”し、地域本部と”統合”する」という報道がなされました。報道機関によっては「正式には5月のPTA総会で決定する」ことを省略したために、あたかも決定したような伝え方がされました。4月に私が校長に就任後、PTA会長をはじめ役員の方々と話合いを進め、実情を考慮し、5月のPTA総会では「『和田中PTA』がPTA協議会を”休会”し、名称を保護者の会とし、地域本部と”連携”する組織に改組する」ということを決定しました。

それでは、なぜ和田中学校は、PTA組織を改組し、保護者の会を立ち上げたのでしょうか。

その大きな理由は、「保護者と地域の活動を連携させ相乗効果を出していきたい」と考えているからです。和田中学校では、図書館の居場所づくりにはじまり、土曜日寺子屋や英語アドベンチャーコース、夜スぺなど、地域本部が主催し学力を支援する取り組みが積極的に行われてきました。しかし、ここ1、2年、その活動の領域が急激に大きくなり、現在の地域本部のスタッフだけではすべてを実行できなくなりつつあります。そこで、保護者の皆様にも地域本部の活動をサポートしていただき、地域本部とともに学校を支援する大きな力になっていただきたいと考えています。和田中学校を大きな船、「和田丸」に例えて話をすると、「和田丸」は帆を張って自力で進むことはできるのですが、もっと強い推進力を得るために、船の両側に保護者と地域というに大きな外輪をつけた船にしていきたいのです。両側の2つの外輪がうまく噛み合って連動し「和田丸」が力強く進んでいく。保護者と地域とがばらばらに動くのでなく、二つの力が相乗効果となって1+1が2に留まらず3になる。これが私の描く和田中学校の理想形です。
 成り立ちの経緯や歴史、また規約も違う二つの組織が連携して活動するわけですから、お互いに従来の活動内容を一から見直さなければなりません。特にPTAに関しては、PTA協議会を休会することで、慣例的に行われている会議やイベント、事務負担などを見直し、軽減をしていきます。その一方で、生徒に向き合う活動や地域本部とつながる時間を増やしていきます。教職員と保護者との関係も新らたに構築し、教職員が学校業務に専念できるように、「保護者の会」という名称にしました。そして、連携の第一歩として、保護者の会が土曜日寺子屋の活動に参加をしたり、地域本部の会議へ出席をしたりするなど、具体的な連携をひとつずつ増やしていきました。
 そして、一年が経過し、土曜日寺子屋、夜スぺなどでは、地域本部と保護者の会が力を合わせて運営することができました。ダイナミックな進歩があった一年だと思います。

 さて、「『地域』が公立学校を支援していく」という試みは、杉並区に留まらず、今、日本全体の大きな流れになっています。和田中では地域本部という名称ですが、杉並区では「学校支援本部」と呼ばれる組織を平成23年には中学校全校設置する計画が進んでいます。また、「学校支援本部」の設置はすでに文部科学省の基本政策に位置づけられており、平成20年度には約50億円の予算がついています。もちろん、文部科学省の学校支援地域本部事業のモデルになっていのは、和田中学校です。こうして、杉並区教育委員会や文部科学省が力を入れて推し進めているわけですから、それを立ち上げ推進するための予算が確保されています。杉並区の場合、「学校支援本部」の活動費として一日の交通費に2,200円相当の実費が学校に支給されます。ただ和田中の場合は、活動している人数と頻度が他の学校とは比較にならないほど多いので、一回1,000円とかに1,100円とかに減額してお支払いしているのが実情です。

 しかし、保護者の会の活動に関しては、交通費が支払われるという習慣もルールもありません。今年度、保護者の会と地域本部が連携するにあたって「同じ活動をするのに地域本部には交通費相当が支払らわれるのに、保護者の会には支払われるのかどうか、ルールが曖昧である」という意見が出されました。先ほど申し上げましたが、成り立ちや歴史、規則が違う二つの組織が連携するわけですから、こういった課題が持ち上がるのは当然だと思っています。
この課題については、最終的には、保護者の会と地域本部で解決していただくことですが、私の意見を述べさせていただきます。私は、今までどおり、地域本部の人には交通費相当の実費を支払い、保護者の会の人には支払いをしないことがいいのではないかと思います。保護者の会の皆様は、自分の息子、娘のために活動するわけですが、その一方で、地域本部は、自分の息子、娘ではない子どものために奉仕活動をするわけです。地域本部の方々の中には、電車やバスを使ってこられる方も多く、その交通費も自己負担をしていては、組織として永続的に続かないと思います。少なくとも、地域本部と保護者の会の2つの組織が立ち上がって間もない状況の下、それぞれの組織が動きやすいように、しばらくはお互いの規約に照らし合わせて進めた方がいいと考えています。保護者の皆さんにはご理解をいただきたいと思います。

保護者の会と地域本部が連携をしていくうえで、こうした課題は来年度以降もいくつか発生すると思われます。大事なことは、お互いに対話を図りながら、ひとつずつ丁寧に課題を解決していく姿勢です。前例のない取り組みなので試行錯誤を繰り返すことになりますが、これからも進化を続けていきたいと思います。今後とも、みなさんで力を合わせ『世界で一番通いたい学校』、『和田中学校』を創り上げていきましょう。よろしくお願いいたします。


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